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導入
患者さんの数が思うように増えず、何から手をつけるべきか調べている院長先生に向けて書いています。
先に結論を3つ申し上げます。
ひとつめ。集客の手段を選ぶ前に、1日に何人来ていただければ成り立つのかを出したほうがよいと思っています。この数字がないと、施策が効いているのかどうかを判断できません。
ふたつめ。診療圏に検索の需要がなければ、検索対策はほぼ効きません。これは当社が53万円を失って学んだことです。
みっつめ。順番があると考えています。マップ、ホームページ、SNS、広告の順です。理由は本文に書きます。
なお、当社は医療機関ではありません。ここに書くのは、当社が自社で4つの施策を試した実測と、中小企業診断士として整理した考え方です。個別の表現が医療広告の規制に当たるかどうかの判断は、所管の保健所・都道府県にご確認ください。
結論|集客の前に、1日に何人来れば成り立つのかを出したほうがよいと思っています
「クリニック 集客」で検索すると、施策を並べた記事がたくさん出てきます。SEO、MEO、広告、SNS、看板、チラシ。どれも間違ってはいません。
ただ、同じ検索画面には、こういう質問も並んでいます。
- クリニックは1日に何人で黒字になりますか
- 潰れそうなクリニックの特徴は
- クリニック経営は厳しいですか
施策の質問ではなく、経営の質問です。そして施策を並べた記事は、この質問には答えていません。
集客が足りないのか、単価が合っていないのか、そもそも診療圏に人がいないのか。これが分からないまま施策を始めると、効いたかどうかも分からないまま費用だけが出ていきます。
まず、損益分岐点の患者数を出します
固定費 ÷(1人あたり診療単価 − 変動費)
中小企業診断士の試験で最初に習う考え方のひとつです。式はこうなります。
必要な患者数 = 固定費 ÷(1人あたりの診療単価 − 1人あたりの変動費)
固定費は、家賃・人件費・リース・光熱費など、患者さんが来ても来なくても出ていくお金です。変動費は、医薬品や検査試薬など、診察するたびに増えるお金です。
仮の数字で計算してみます。
| 項目 | 仮の数字 |
|---|---|
| 月の固定費 | 400万円 |
| 1人あたりの診療単価 | 6,000円 |
| 1人あたりの変動費 | 1,000円 |
| 1人あたりの限界利益 | 5,000円 |
| 月に必要な患者数 | 800人 |
| 診療日を月22日として1日あたり | 約37人 |
この場合、1日37人が損益分岐点です。今が30人なら、あと7人です。目標が「7人」という具体的な数字になると、打つべき手も変わります。
診療科によって、必要な人数はまったく違います
単価が高く、1人あたりの限界利益が2万円の診療科であれば、同じ固定費でも必要な人数は4分の1以下になります。「1日何人が普通か」という平均値には、あまり意味がないと考えています。
逆に、単価が低く回転で成り立つ診療科では、1日の枠そのものに上限があります。この場合、集客を増やしても入りきりません。枠が埋まっているのに利益が出ないなら、それは集客の問題ではありません。
「集客が足りない」のか「単価が合っていない」のか
ここを分けて考えると、やることが変わります。
| 状態 | 考えられること |
|---|---|
| 枠が空いている | 集客の問題。この記事の後半へ |
| 枠は埋まっているが利益が出ない | 算定内容・診療の構成・費用構造 |
| 新患は来るが再来しない | 院内での体験の問題。集客を増やしても穴から漏れる |
真ん中と下の場合、集客にお金をかけるほど状況は悪くなります。穴の空いたバケツに水を足すことになるためです。
とくに見落とされやすいのが、いちばん下の「新患は来るが再来しない」場合です。新しい患者さんに来ていただくほうが、すでに来られた方にもう一度来ていただくより、手間も費用もかかるのではないかと思っています。ここが漏れている状態で広告を出すと、費用ばかりが増えます。
再来されているかどうかは、レセプトのデータから出せます。初診の方のうち、何割が2回目に来られているか。院内のデータから出せる数字だと思います。出したことがないなら、集客を考える前に一度見ておく価値があると思っています。
診療圏に、そもそも需要がありますか
検索されていない地域で、検索対策はほぼ効きません
当社は、自社の集客のためにGoogle広告に約53万円を使いました。3,091クリックあって、問い合わせは0件でした。
広告費をかけて実際検証して分かったのは、狙っていた語が、広告を止めた状態では週に2回から4回しか検索されていなかったということです。つまり広告費を払っている間だけ人が来ていて、需要そのものがほとんどありませんでした。
クリニックの場合も同じことが起こり得ます。「○○駅 内科」が月に何回検索されているかを、先に確認したほうがよいと考えています。
調べ方
Googleキーワードプランナーで、地域名を付けた語の検索回数が分かります。Google広告のアカウントがあれば無料で使えます。※正確な数値を出すためにはGoogle広告にお金をかける必要があります。
無料で検索回数がわかる「アラマキジャケ」というツールもあります。
ただ、検索回数が少ないからやめる、という判断は早いと思っています。当社は月10回程度しか検索されていない語から、年に3件の問い合わせをいただいています。母数が小さくても、探している人の目的がはっきりしている語は効きます。
見るべきなのは回数そのものではなく、ゼロなのか、10なのか、100なのかを知ったうえで判断することだと考えています。
検索回数と併せて見たいのが、診療圏の人口と、同じ診療科の医院の数です。人口が変わらない地域で医院が増えていれば、1院あたりの患者数は減ります。これは集客の巧拙とは別の話で、そもそもの前提が動いているということです。
人口は自治体が公表している統計で分かります。同じ診療科の医院の数は、Googleマップで地域名と診療科名を入れれば、おおよそ見えます。どちらも無料で調べられます。ここを見ずに施策を選ぶと、効かない理由が最後まで分かりません。
そのうえで、施策を選ぶ順番
① マップ(MEO)
いちばん先にお勧めしています。費用がかからず、クリニックは距離が効くからです。
当社は、口コミを増やす働きかけを一度もせずに、仙台市太白区で1位を8ヶ月維持しています。クリニックは医療広告ガイドラインの関係で「口コミを集めましょう」が使いにくいのですが、口コミ以外でできることがあります。詳しくはクリニックのMEO対策に書きました。
もうひとつの理由は、結果が出るまでが比較的早いことです。ホームページのSEOは数ヶ月から年単位ですが、マップは情報を整えるだけでも見え方が変わることがあります。効いたかどうかの判断が早くできる施策から始めたほうが、次の判断もしやすいと考えています。
② ホームページ
マップで見つけた人が、最後に確かめる場所です。ここが古いままだと、せっかく上位に出ても選ばれません。
ただし、作り直せば増えるとは限りません。見られていないのか、見られて離脱しているのかで、やることが変わります。詳しくはクリニックのホームページリニューアルに書きました。
③ SNS
認知と求人には効くと考えています。ただSNSは検索されません。「近くの内科」と探している人には届かないので、①②のあとになります。
そして手間がかかります。当社の実測では、フィード投稿1本に3時間、動画1本に6時間でした。詳しくはクリニックのSNS運用に書きました。
④ 広告
最後です。①②が整っていない状態で広告を出すと、クリックした人が行き止まりに当たります。詳しくはクリニックのWeb広告に書きました。
なぜこの順番なのか
理由は2つあります。
ひとつは、お金がかからない順だからです。マップは無料で、広告は払い続ける必要があります。
もうひとつは、やめても残る順だからです。マップの順位もホームページも、手を止めても当面は残ります。広告は止めた日に消えます。当社の実測でも、Googleビジネスプロフィールの投稿を怠っている今も、マップの順位は残っています。
当社が自分でやってみた数字(4施策ぶん)
ここまでの話の裏付けとして、当社が自社で4つとも試した結果を並べます。都合のよい数字だけを選んではいません。
| 施策 | 投じたもの | 結果 |
|---|---|---|
| MEO | 費用0円・作業のみ | 太白区1位を8ヶ月維持。閲覧は6割増 |
| SEO(ブログ) | 記事の執筆 | 12ヶ月ならしてクリック率0.6% |
| SNS | 9投稿・1本3〜6時間 | リーチ17,269・フォロー191・問い合わせ0件 |
| Web広告 | 約53万円 | 3,091クリック・問い合わせ0件 |
4つのうち、2つは問い合わせゼロです。そして効いたMEOは、費用が0円でした。
ただし、ここから「広告とSNSは無駄」と結論づけるのは早いと思っています。当社の場合は狙う語を間違えていましたし、SNSはまだ9投稿しかしていません。あくまで当社1社の、しかも短い期間の数字です。
それでも、お金をかけた順に結果が出るわけではないということは言えると思っています。

同じことを、自院の数字でやることもできます。当社では毎月3社まで、無料で診断をお受けしています。マップとホームページが地域でいま何位に出ているかをお調べして、4つのうちどこから手をつけるかをお伝えします。無料の診断はこちらからどうぞ。
やってはいけないと思っていること
口コミを患者さんに依頼する
集客の記事には「口コミを増やしましょう」と書かれていることが多いのですが、クリニックの場合は注意が必要です。
厚生労働省のQ&Aには、医療機関が有償・無償を問わず投稿を依頼した場合には誘引性が生じる、という趣旨のことが書かれています。依頼した時点で、その口コミは広告規制の対象になり得るということだと理解しています。
会計時に「口コミをお願いします」と伝える、待合室に掲示する、診察券にQRコードを刷る。どれも該当する可能性があります。個別の判断は所管の保健所・都道府県にご確認ください。
全部を同時に始める
MEOもSNSも広告もリニューアルも、一度に始めたくなります。ただ同時に動かすと、何が効いたのか分からなくなります。
そして、続きません。当社もSNSを毎日投稿しようとして、続けられていません。人の手で維持できない量を計画に入れると、たいてい全部が止まります。
ひとつずつ、3ヶ月ごとに増やすくらいがちょうどよいと考えています。
もうひとつ、効果が出る前にやめることも避けたいところです。マップもホームページも、動くまでに数ヶ月かかります。1ヶ月で結果が出ないからと次の施策に移ると、どれも中途半端なところで止まります。
始める前に「何を、いつまで、どうなったら続ける/やめる」を決めておく。当社が53万円を失ったのは、これを決めていなかったからです。
集患を数字で見るということ|WEB解析士・中小企業診断士として
当社の代表は、経済産業大臣登録の中小企業診断士と、WEB解析士の2つを持っています。前者は経営コンサルタントに関する国家資格、後者はアクセス解析の民間資格です。
中小企業診断士はMBAと比較されることがあります。MBAは大学院で取る「学位」、中小企業診断士は国が行う試験の「資格」です。診断士には5年ごとの更新があり、実務に従事していないと維持できません。
この記事で最初に損益分岐点の話を書いたのは、この2つがつながる場所がそこだからです。WEBの施策で分かるのは「何人がサイトを見たか」までで、「何人来院したか」は院の側の数字です。この2つをつながないと、施策が効いているかどうかは永久に分かりません。
当社が見るのは、この順番です。
- マップやサイトが、何回表示されたか
- そのうち何人が、電話や予約を押したか
- そのうち何人が、実際に来院したか
- その人数は、損益分岐点に対して足りているか
1と2は解析の領域、3と4は経営の領域です。WEB会社は1と2までしか見ないことが多く、そこで話が終わります。当社が両方を見たいと考えているのは、この分断があるからです。
診療は先生の領域です。ただ、集患の設計と、投じた費用が何に変わったのかを見る作業は、経営と解析の領域だと考えています。当社がお手伝いできるのは、そちらです。
よくあるご質問
Q. 何から始めるのがよいでしょうか
A. Googleビジネスプロフィールの整理からをお勧めしています。費用がかからず、変更もすぐ反映されるためです。ここで動きがなければ、そもそも診療圏の需要を疑ったほうがよいと考えています。
Q. 1日に何人来れば黒字になりますか
A. 固定費と診療単価によるため、平均値には意味がないと考えています。この記事の式に自院の数字を入れてお出しください。仮の例では1日約37人でしたが、単価が違えばまったく変わります。
Q. どのくらいで効果が出ますか
A. 当社の場合、マップの順位がはっきり動いたと感じたのは数ヶ月かかってからです。広告のようにその日から出るものではありません。一方で、止めたその日に消えるものでもありません。
Q. 業者に頼むべきでしょうか、自院でやるべきでしょうか
A. 一度整えれば変わらない作業(プロフィールの設定、情報の統一)は自院でも十分だと思っています。続けることが必要な作業(投稿、数字の確認)が回らないなら、そこを外に出すという分け方をお勧めしています。
まずはご相談ください
当社では、MEO・ホームページ制作・SNS運用・広告運用をお受けしています。ただ、お話をうかがったうえで「今はその段階ではないと思います」と申し上げることもあります。
毎月先着3社限定で、無料の診断を行っています。いまマップとホームページが地域でどう見えているかをお調べして、お伝えします。そのうえで、どこから手をつけるかを一緒に決めます。
「業者から提案を受けたが、判断がつかない」というご相談でも構いません。無料相談はこちらからどうぞ。